トンボが飛び、涼しい風を感じるようになった9月。八田小学校のにぎやかな放課後のグラウンドにお邪魔しました。今回とりあげるのは、約40年の歴史を持つ小学生男女混合ソフトボールチーム「八田リトルペガサス」。八田小学校のグラウンドで、火・木曜日と土日祝を主な練習日として活動しています。現在は八田小学校や多々良小学校、大川小学校の児童さん合計22名が入部しています。キリリとユニフォームに身を包んだ姿は、遊具で遊ぶ他の子どもたちよりも大人びて見えました。
負ける悔しさより勝つ喜びを
このチームの監督は、鬼海良一さん。なんと約25年、このチームで監督を続けられています。
「もともと最初は1年間だけ監督をやるという話だったんですけどね(笑)。もう25年になりました。監督になってから1~2年はきつかったですよ。公式試合で29連敗。それだけ負けが続いた後に試合で勝った時、それはもう泣きました。僕の想いは『負ける悔しさより勝つ喜びを知ってほしい』ということ。自分は高校生の時にサッカーもやっていたんですが、ここぞというときに限って試合に負けていて。その負けの悔しさが今でもずっと残っているんです。だからそれよりも勝った瞬間の喜びをたくさん経験してほしいと思っています。」
「本当は涙もろいし優しいんです。だけどソフトボールのときは厳しく言いますよ」という鬼海監督。それにはこんな理由が。「中学生になったら学校の部活動があるので、『ソフトボールがやりたい!』という子ばかりがチームに集まるでしょう。だから中学生になっても通用する選手になれるよう、今のうちから悪いところはきちんと悪いと伝える。子どもたちにはうるさい、しつこいと思われるかもしれませんが。少年野球、少年ソフト、中学校の先生だってそうです。できるようになってほしいからこそ厳しく言うときもあるんです。」
「子どもたちには『親や先生に感謝の気持ちを持ちなさい』とよく言っています。小学生の今はピンとこないかもしれませんけどね。やっぱりお父さんお母さんがいてこそソフトを続けられている。自分たちだけではできないはずだから。僕も親にそうやってしてもらってきました。ありがとうっていう言葉はいいもんね。25年も監督をしていれば卒部生もいっぱいいまして。彼らがここに遊びにきてそう言ってくれるのも嬉しいですね。」
こんな温かみあふれる監督の人柄がこのチームのカラーをつくるものの一つなんだろうな、と感じさせられたお話でした。
子どもたちと同じ気持ちで
取材の日、小学6年生の部員さんのお母さんが当番で来られていました。子どもたちの活躍を支えるお母さんのお話もたくさん聞かせていただきました。「子どもがこのチームでソフトボールをやっていて良かったなと思うのは、挨拶がよくできると褒められるときですね。それから、試合に勝って嬉しそうな姿を見るとき。日頃のいろんなことを忘れて、こちらも手放しで嬉しくなります。逆に、負けた日の帰りの車の中はどんよりしています(笑)。私たち親も、自然と子どもと同じ気持ちになっているんですね。この子はお兄ちゃんがスポーツをする中で叱られたりするのを見ていたから、このチームにもいくら誘われてもずっと『入らない』って言っていました。でも実際にリーグで試合をしてみたら楽しかったみたいで、コロッと入部したんです。今では『なんで1年生のときから入らなかったんだ』と言うほどです。」
まっすぐな瞳のキャプテン
キャッチボールを終え「次は何の練習をしたらいいですか」と監督に尋ねるのは、キャプテンの栗栖煌大くん。小学6年生です。いくつか質問をすると、こんなお話を聞かせてくれました。
「キャプテンとして気をつけていることは、自分が声を出すことです。負けているとき、応援が途中でなくなってしまうことがあるから、そういうときこそ大きな声で応援をして、逆転できるような雰囲気をつくります。キャプテンは責任が大きくて大変なこともあるけど、何の練習をすればいいかわからないときや一人で困っているとき、仲間が教えてくれたり提案してくれたりして助けてくれます。だからみんなには『ありがとう』って言いたいです。僕たちは6年生で卒部になります。6年生が最後に全員でトロフィーを山分けするには、あと3~4個とらないといけません。最後までねばって試合に勝って、一つでも多くのトロフィーをとるのがこれから卒部までの目標です。」
八田地区の活力となっている小学生ソフトボールチーム。部員は随時募集中です。これからも八田小学校の校庭に声を響かせ、将来に向かって羽ばたく力を育んでいってください!