長い長い夏休み。共働きの家庭が増え、日中を誰もいない家で過ごす子どもは少なくないでしょう。そんな子どもたちの居場所づくりを、「食」を軸に実現しているのが〝舞myキッチン〟の活動です。 舞松原校区の社会福祉協議会が主催となり、ボランティアや公民館が一緒になって運営をしています。舞myキッチンの開催当日に行なうことはシンプルで、みんなで一緒に料理をして、みんなで一緒に食べること。
この活動にはどのような想いが込められているのでしょうか。今回は、舞myキッチンに関わっているうちの約10名もの方からお話をうかがうことができました。
長期休暇、子どもたちはどう過ごしている?
舞myキッチンの開催場所はここ、舞松原公民館です。夏休み中に5回、冬休みと春休みに2回ずつの年間9回行います。普段、子どもたちは学校で給食を食べていますよね。でも長期休みにはそれがなく、お昼にご飯をつくってくれる人が毎日家にいるとは限りません。子どもたちは長期休暇を自宅でどういうふうに過ごしているのだろうか。そんな疑問があり、長期休み中、子どもたちが食事できる居場所を提供したいと思いました。なおかつ子どもが少しでも自分で料理できるようになれば、子どもたちの食を確保できるのではないか。このような考えで、子どもたちの「居場所づくり」と「自立支援」を目指してこの活動を始めました。
自分で作れるようになってほしいという思いがあるので、メニューは「子どもたちが自分でできそうなもの」を一番の軸にして決めています。実際に「帰ってつくったよ」「お母さんにうまくできたねってほめられた」なんていう話を子どもたちから聞くことができています。
〝日常〟の料理の延長上に
当日、この時間から始めますよとお知らせしている一時間前には、子どもたちが公民館に来ています。そういうのを見ると、すごく楽しみにしてくれているのがわかって嬉しくなります。
子どもたちは一生懸命つくっていますし、高学年で料理に興味がある子は特に率先して動いてくれます。役割分担は全く決めていないので、高学年の子が低学年の子に教えたり、交代しながら包丁や火を扱ったりしています。
カロリー計算をした献立でもないし、分量もきっちり量っていない、本当に大まかな料理。普通に家庭でつくるような感じでやっています。だから例えば、カレーは鍋によって違う味のものができあがります。また、この校区には商店街がないため食材をお願いできる商店もなかなかないので、食材は安いお店を見つけ見つけ買いに行きます。たまに家庭菜園でできたものを持ってきて下さったり、食材提供というかたちでご協力をして下さる地域の方々もおられ、とても助かっています。改めてお話すると、本当に家庭的なことをやっていますね。
「食」を通じた子どもたちの成長
みんなで「いただきます」と言ってみんなで食べると、普段はあまり食べない子もつられてたくさんおかわりします。「ごちそうさま」の後には食器を流しに持って行って、最後はホールのぞうきんがけまで。そういう一連のことをしているので、私たちはただ単に食事を提供しているのではなく、+αの部分がたくさんついてくると思っています。自分たちが作らなければいつまでも食べられないので、「何かすることないですか」と聞いてきたり。「エプロンのひもを結んでください」って言えなかった子がもじもじしながらも寄ってきて「結んでください」って言えるようになったり。子どもたちは自分から積極的に動くことを覚えていっているように感じます。
公民館からつくる、人と人とのつながり
舞松原校区の子どもたちは、公民館が大好きなんです。何もない日でも公民館に遊びにきます。「館長~」と言って。小学校と公民館が離れているから、「お茶くださーい」「トイレ貸してくださーい」と寄って帰る子もいます。それで遊んで帰るんです。親が共働きで夕方や夜まで家に誰もいない子もいますから、こういう居場所があるのは地域の強みになると思います。
私たちは今、校区の中で顔見知りを増やすことを目指して活動しています。地域全体が顔見知りになることで、不審者が入ってきてもすぐにわかるような環境がつくれると考えています。舞myキッチンの活動も3年目になりましたから、私たちと子どもたちがお互いに顔を覚えて、道で会ったら子どもたちから声をかけてくれるようになりました。だから公民館を一つの拠点に様々な活動をしていくことはやはり大事なんだと実感しています。現代では夫婦共働きの家も多いですから、地域が一緒になって子どもたちを育てていきたいですね。