香陵小学校の今日は参観日。子どもたちはお父さん、お母さんと一緒に下校していきます。そんな通学路に朝夕立ち、子どもたちの安全を守っている現在9名の〝見守り隊〟のみなさんです。
――この〝見守り活動〟を始めたきっかけは?
最初のきっかけは、小泉内閣で「次世代育成支援対策推進法」ができたこと。これは、少子化の時代になってきたから次世代を背負う子どもたちの育成に力を入れようという国の政策です。それを受け福岡市も「福岡市子ども総合計画」をつくり、地域で子どもの見守りをしましょうという一つの目標をつくりました。さらに、地域のことは地域でやりましょうという方針のもとに自治協議会の制度ができました。ちょうどその頃の香陵公民館の館長さんが、香陵小学校の初代校長を務めた非常に教育に熱心な方だったので、香陵校区は子どもたちを中心に考えたまちづくりをしていく決定をしました。
国の政策と市の方針と、地域のまちづくり。それらが背景となり、子どもたちの安全を守る「安全パトロール」としてこの活動は始まりました。平成17年の新学期から始め、もう15年になります。老人クラブのメンバーで行う「安全パトロール」。それがいつの間にか、学校で先生が言ったんでしょうね、私たちに「見守り隊」という名前がつきました。子どもたちみんなが私たちのことを「見守り隊」と呼ぶようになったんです。
――そういえば、さっき下校中の男の子が「お母さん、見守り隊の人たちってね…」と話していました。それを聞いて、見守り隊と児童のみなさんの距離の近さを感じました。
学校との交流の機会も多くありますからね。入学式と卒業式、運動会、学芸会と様々な学校行事に呼ばれて行きます。もちろん見守り隊として呼ばれていますから、出席するときはいつもこの黄色いジャンパーを着てきてくださいと言われるんですよ。
一昨年からは道徳の授業にゲストティーチャーとして行くようになりました。こういった学校の中での時間を一緒に過ごすと、見守り活動のときにも子どもの方から声をかけてくれるようになりますね。「さようなら」という声も多くなるし、子どもとの関係も深く、親しくなってくるというか。
――子どもたちとはどんな交流がありますか?
私とジャンケンをして、勝つまで横断歩道を渡れないという遊びをしている子がいます。最高で13回かな、連続でジャンケンをしましたよ。
私はバレンタインにチョコレートをもらったことがあります。美味しかったし、嬉しかったですね。
卒業式の日、6年生が「一緒に写真を撮ってください」と来たこともあります。
私は自分が出席簿をとっているみたいだなあと思うときがあります。あの子が来た、あの子がまだ通ってないね、って。旗を持っていて本当に楽しいです。
子どもたちも同じように、私たちの誰かが来ない日があれば「今日はあのおじさんいないな」と思っているかもしれません。私たちも子どもたちに見守られているようですね。
――心があたたかくなるお話ですね。
挨拶や親睦だけでなく、私たちはこの活動を通して子どもたちに交通ルールを身につけてもらいたいとも思っています。横断歩道は歩行者優先ですが、子どもたちには必ず一旦止まって左右を見るということが必要です。急に飛び出すことがありますから。だから車が来ているときは、必ず子どもの方を一旦立ち止まらせる。一方で車には歩行者優先ということを教えなければいけない。そこの誘導が難しいときがありますが、私たちもきちんと考えながら横断歩道に立っています。
見守り活動を始めてから、一回も事件や事故が起きていないんです。保護者の間でも「いつも見守ってくださるから香陵校区には事故がない」という話をしていただいているようです。香陵校区は小学校を中心としたコンパクトな校区なので、パトロールしやすい環境でもあるのでしょうね。
親御さんもすごく安心だと思います。学校から出て、おじさんたちと「さようなら」をしたらもうすぐ自分の家につきますから。
――最後に、地域のみなさんに向けてメッセージをお願いします。
「雨の日も風の日も、暑い日も寒い日も大変だね」と声をかけてもらうこともありますが、当の私たちは大変だとは思っていません。学校から子どもたちの下校時間の予定表をもらうんですが、その予定表を見て「今日は何時だな」と自然に体が動くというか。見守り活動が生活の一部になっているんです。地域の方々に私たちから何か声をかけるとすれば、子どもは校区の宝ですから、私たちも頑張りますので、みんなで子どもを見守っていきましょう、ということでしょうか。
取材当日は小雨が降り、とても寒い日でした。しかしみなさんは傘もささず、背筋をピンと伸ばして外に立ち続けていました。その姿に頼もしさと、あたたかさを感じました。見守り隊のみなさん、これからもお元気で、子どもたちと校区を見守っていてください。