まだ夏の名残ある日曜日。晴れ空に負けないくらい、館内は活気づいています。今日は月に一度の〝ふら〜っとカフェ壱岐南〞開催日。52回目となる会場を訪れました。
ふら~っとカフェ壱岐南レポート
ボランティアもあわせ、毎回200名程が集まるらしく、受付だけでも大忙しの様子。会場にはいくつものブースが並びます。野菜や果物の販売には、開始前から買い求めの列が。ローストポークサンドや、たこやき、やきそば、など食べ物も充実、パンやクッキーの販売もあります。ネイルやメイクの美容コーナーもあり、マッサージや健康チェックに介護予防相談、折り紙の展示と実演も。あおやぎの生花販売も人気です。今回は特別に移動スーパーの車両も訪れていて、注目されていました。
各テーブルでは、振舞われるコーヒーやお茶菓子を味わいながら、思い思いにおしゃべりを楽しまれています。用意された座席も、足りないのではと感じるほどの賑わいです。そんな中、今日の内容について説明があり、いよいよスタート。まずは、体操から。馴染みのある歌にあわせてハンカチを振ったり、手を動かしたり。大きな仕草で楽しげに3曲、身体と気持ちが温まります。
次は、地域合唱団「のかたカンタービレ」の登場、今回の目玉です。先の公演も満席になった人気サークル、民謡や賛美歌など、電子ピアノのリードできれいなコーラスです。中盤からは、懐かしい歌謡曲などを、会場みんなで声を揃えて歌います。はつらつとした笑顔があふれました。
およそ1時間の催しを終えた後は、フリータイム。みなさん、月に一度のこの時を楽しみにされているのでしょう。集まったお友達と、あちらこちらで話に花を咲かせています。お待ちかねのカレーも美味しそう。
この時間をお借りして、実行委員会から4人の方に集まっていただきました。カフェがはじまった経緯や、いまのお気持ち、これからの想い、などを伺います。
――初回は2015年だと聞きました。
淀さん そうです。2月にはじめて開催しました。校区の絆を強めたいという気持ちで。独居者や、ひきこもりがちな高齢者を、なんとか引き出したかったんです。この校区は、65歳以上が占める高齢化率が、他に比べて高く、福岡市平均の一・八倍ほど。その半数以上の約二千人が、75歳以上の後期高齢者なので、自宅から出てもらえる機会をつくろうとね。こういう場に来てもらえれば、何かあった時の力になれますから。
――行政的な指示があったのですか?
本庄さん ないです、我々の自発的な行動です。とりあえず集まったメンバーで、どうしようか長く悩みましたが、やるしかないだろう! と、無理やり日程を決めて決行しました。会場の壱岐南公民館に、入りきれないほど人が集まって。普通だと、どの団体が何を担当するかなど、すんなり行かないものですが、ここは違いましたね。役割分担もなく、自分がやりたいことを、できる時にやるという、まさにボランティアを体現する形ではじまったんです。おかげで、トラブルもストレスもなく、ここまで来られました。
――それでも大変なこともあったのではないですか?
本庄さん 手探りでした。周りにあまり例がなく、やってみないと分からないという中で、いろんな工夫が生まれました。まず公民館ではいろんな妨げがある。人は入りきれないし、車も停められなければ、物販もできない。なので、介護施設を利用させてもらえるようになったのは、大きな前進でした。資金的なことも、かなり心配でした。3回目はないなと、みんな思っていたくらいです。けども、たくさん集まってくれるので、やめる訳にもいかず。食事のことなんかも、全く考えが及ばなくて。それこそ手弁当は大変で、校区のお弁当屋さんに頼むようにしたんです。そこから、壱岐・野方商店連合会との繋がりができ、参加してもらうようになりました。
――真似するにも難しいですね。
本庄さん 公民館、自治協議会、社会福祉協議会、どこかだけでは出来ないでしょうし、介護事業所と商店連合会、そして地域みんなの応援で成り立っていますからね。他の地域では、一般企業の参入自体難しいでしょう。このような形態は、ちょっと見当たらないのではないですか? だからといって、いろんなことをやろうとせずに、身の丈にあったことをやるだけです。
――力まない感じが、ちょうど良いのかもしれないですね。
本庄さん たしかに。俺が俺がという人はいませんね。有志が集まる実行委員会形式が、そうさせているのかもしれません。義務はないし、得意なことを持ち寄っているだけ。各々が、自分たちの力量の中で対応しています。
――そんな中、運営資金集めはどのように?
本庄さん これが難題でしたが、企業協賛を募る仕組みを思いついたことが、功を奏しました。地域貢献したい企業と、思惑が一致したんですね。あとは、利用者からの募金です。これも結構集まります。ありがたいことです。
――いろんなことが自然発生的でありながら、上手く噛み合っている印象です。
新里さん 意識してやったものはほとんどないですが、自分たちでもそう思います。つくった訳ではなくて、やってみたら結果的にこうなったという。しかし、介護事業所の方々に携わってもらえるのは、やはり大きな強み。安心感があり、心強いです。
――施設としてはいかがですか?
小金丸さん 事業所も同じですよ。お互い様です。自分たちの専門的なノウハウを体験してもらえるだけでなく、いろんな交流が図れますから。介護が必要になった時、既に知ってもらえている。それは、絶大な効果です。感謝しあいながら、相互の持ち味を享受できる、この関係が、上手くいく要因なのだと思います。
――長く続く秘訣はなんですか?
小金丸さん 役割を決めないことかもしれません。会場の準備なども、自然と誰かが動きますしね。私たちはきっかけをつくっただけであって、支えてくれる人たちがいるからこそ、続けて来られたことです。一般企業とスクラムを組むことも珍しいですが、しがらみなく、重荷にならない関係性が、良好なバランスを保つのだと思います。なにより、自分たちが楽しくなきゃ続きませんよ。来年2020年2月は、5周年式典です。
――あらたな活動も始められたとか。
小金丸さん 〝てつだい隊〞というボランティアを編成しました。ふら〜っとカフェは来てもらう、てつだい隊は自宅へ出向く、接点づくりです。将来は、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる「地域包括ケアシステム」の構築につなげたいです。
――どちらも、お手本のような活動ですね。
小金丸さん トップダウンではなく、ボトムアップだからでしょう。型にはめていくのではなく、自発的に形成されていくので、独自性があり、ユニークさもあるのだと思います。共有の課題をみんなで解決していったらこうなった、という感じです。
欲張らない、肩肘張らない、みなさんの善意のもとでは、必然の成り行きのように感じました。次回は10月6日10時~15時、場所は〝かりん〞の予定だそうです。ふら~っと、遊びに行ってみてください。